“女の子”と認めてもらえない7歳のサシャと、子どもの自由と幸せを守りたいと願う母。一つの家族の<ゆずれない闘い>を映した心震えるドキュメンタリー。
ただ ”女の子” として生きたい
フランス北部、エーヌ県に住む少女・サシャ。出生時、彼女に割り当てられた性別は“男性”だったが、2歳を過ぎた頃から自分は女の子であると訴えてきた。しかし、学校へスカートを穿いて通うことは認められず、バレエ教室では男の子の衣装を着せられる。男子からは「女っぽい」と言われ、女子からは「男のくせに」と疎外され、社会はサシャを他の子どもと同じように扱わない……。
トランスジェンダーのアイデンティティは、肉体が成長する思春期ではなく幼少期で自覚されることについて取材を始めた監督は、サシャの母親カリーヌに出会った。長年、彼女は自分たちを救ってくれる人を探し続けて疲弊していたが、ある小児精神科医との出会いによって、それまでの不安や罪悪感から解き放たれる。そして、他の同じ年代の子どもと同様にサシャが送るべき幸せな子供時代を過ごせるよう、彼女の個性を受け入れさせるために学校や周囲へ働きかける。まだ幼く自分の身を守る術を持たないサシャに対するカリーヌと家族の献身、言葉少なに訴えるサシャ本人の真っ直ぐな瞳と強い意志が観る者の心を震わせる。
※ 作中では「身体は男性」という表現が出てきますが、身体こそ「自然」で、本質的とする考えからトランスジェンダーの人々への「身体的男性/女性」や「生物学的性別」などの表現が、差別や偏見を助長する文脈でも使われることがあるため、ご注意いただければ幸いです。
フィクションからドキュメンタリーへと移行しながら、社会の周縁で生きる人々に光を当てた映画を制作してきたセバスチャン・リフシッツ監督は、カンヌ、ベルリンをはじめとした世界中の映画祭で高く評価されている。本作も2020年ベルリン国際映画祭で上映後、様々な映画賞を獲得し続けている。また、劇場の封鎖されたフランスでは、同年12月にTV放送され、その年のドキュメンタリーとしては最高視聴率を獲得し、大きな反響を呼んだ。洞察に満ちた繊細なカメラで捉える、家族の喜びの瞬間、直面する多くの課題―幼少期の“性別の揺らぎ”に対する認知と受容を喚起する貴重なドキュメンタリー。
監督:セバスチャン・リフシッツ
出演:サシャ(本人)
上映時間:85分
音声:フランス語
字幕:日本語
製作年度:2020年
製作国:フランス
原題:Petite fille/英題:Little Girl
ジャンル・キーワード:LGBTQ、多様性
© AGAT FILMS & CIE – ARTE France – Final Cut For real – 2020
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