あん
© 2015映画「あん」製作委員会/COMME DES CINEMAS/TWENTY TWENTY VISION/ZDF-ARTE
どら焼き屋の雇われ店長の千太郎は無口で、毎日黙々とどら焼きを作り続けている。女子生徒たちのたまり場になっているが商売はうまく行っているようには見えない。そんなある日、彼の店に徳江という老女が訪ねてくる。彼女はここで働きたいという。素性もわからず、しかも75歳という年齢もあり千太郎は申し出を断るが、数日後に徳江は自分で作ってきた「あん」を届けに来た。徳江のあんを食べて千太郎はその美味さに驚いてしまう。一度は採用を断ったものの、千太郎は徳江を雇うことにした。おいしさが格段にグレードアップしたどら焼きは評判を呼び、ついには店の前に行列ができ始める。しかし、徳江の病気についての悪い噂が飛び交い、いつしか客足が遠退いてしまう・・
私はあずきに話しかけているの・・・素晴らしい人間ドラマでした。徳江が抱えていたのは「ハンセン病」。今では治療方法も確立され伝染もしないと分かっているのですが、徳江はずっと隔離された施設で育ってきた。そんな女性を演じる樹木希林の演技が素晴らしい。この時代になっても偏見の目で見られるのですが、そんな事実を静かに受け止める。そして短いながらも初めて外で働いた時間は彼女にとってかけがえのない素敵な時間となったのです。それらを徳江がを静かに語るシーンでは本当に涙が止まりませんでした。どら焼き屋の店長役は永瀬正敏。彼も無口な男の役なので、この作品って基本的には会話が少ない。ふたりに絡む(またまた無口な)女子中学生のわかな役は内田伽羅(本木雅弘と内田也哉子の娘、つまり樹木希林の孫)。監督はカンヌに愛された女性監督河瀨直美。すばらしいドラマです。必見です!