ケイコ 目を澄ませて
©2022映画「ケイコ 目を澄ませて」製作委員会/COMME DES CINÉMAS
再開発が進む下町の小さなボクシングジム。そこで日々トレーニングに励むケイコは生まれつき両方の耳が聞こえない。そんなハンディを抱えながらもプロボクサーとしてリングに立ちづけている。プロになって2戦目。会場には母親がきていた。かろうじて勝利を得たケイコに、母は「いつまで続けるのか?」と尋ねる。実は、ケイコの中にも漠然とした不安があった。「自分はこのままで良いのか?」そしてケイコはジムの会長に伝えたい一言があった。「いちど、お休みしたい・・」しかし、その一言が言えない。そんなある日、逆に会長から体調が芳しくないためジムを閉める事になったという話が出る。ジムが閉じられる前に最後の試合に挑むケイコ。しかし、相手の強烈な一撃を喰らってしまう・・・・・
2023年度の日本映画アカデミー賞の最優秀女優賞をはじめ、国内の映画賞を総なめにした作品です。この映画は、実在の聴覚に障害を持ちながらプロボクサーとして戦った女性、小笠原恵子さんの自伝がベースになっています。この作品のケイコはよくスポーツ映画に登場する、スーパーヒロインではありません。むしろ。気持ちが弱く、色々な状況に心は揺れ動く。しかし、行き場のない彼女はルーティンとしているボクシングにしがみついているのです。小さな物語ではあるのですが、静かに心に染み入ってくる・・、そんな映画でした。この映画はいわゆるインディー系の作品でお金もかけていませんが素晴らしいキャストと脚本が、物語をグイグイ牽引していき、あっという間の90分でした。主演はこの作品で一気にブレイクした岸井ゆきの。この作品での彼女の圧倒的な存在感たるや・・。そして素晴らしいのがジムの会長役の三浦友和。優しそうな人柄がそのまま映画に反映されているようでした。私にはいまだにこの映画の不思議な感覚がこびりついています。